第18回IPOI学会学術大会にて院長が講演しました

27年経過症例から再考する長期安定のためのGBR

2026年7月5日、日本歯科大学 富士見ホールで開催された「第18回近未来オステオインプラント学会(IPOI)学術大会」にて、上川歯科医院 院長・上川明久がクリニカルセッションに登壇しました。

演題は、

27年経過症例から再考する長期安定のためのGBR

インプラント治療に伴う骨造成の一つであるGBRについて、27年間にわたり経過を確認してきた症例をもとに、長期安定に必要な考え方を改めて考察しました。

GBRとは

GBR(Guided Bone Regeneration:骨再生誘導法)は、インプラントを埋入するために必要な骨の量や形態が不足している場合に、骨の再生を促す治療法です。

骨を再生させたい部分に必要なスペースを確保し、周囲の軟組織が入り込まないよう保護することで、骨が形成される環境を整えます。

現在では膜や骨補填材、固定方法などが進歩し、さまざまな術式が用いられています。しかし、長期間にわたって安定した結果を得るために本当に重要な原則は、時代が変わっても大きく変わりません。

初診から治療終了、そして27年後へ

今回の講演では、GBRを併用したインプラント治療を含む全顎的な治療症例を提示しました。

初診時の診断模型から口腔内全体の状態を把握し、欠損部だけを見るのではなく、残存歯、歯周組織、噛み合わせを含めた全顎的な治療計画を立案しました。

治療終了時の状態になります。

治療終了から27年後の口腔内写真です。

口腔内は加齢や生活環境、清掃状態、噛み合わせなどの影響を受け続けます。そのため、27年間まったく変化しないことが長期安定なのではありません。生じる変化を定期的に確認し、必要に応じて対応しながら、治療によって得られた機能と口腔内全体の状態を維持していくことが重要です。

この症例は、一度の手術や使用した材料だけで成立したものではありません。適切な診断と治療計画、外科処置、補綴設計、そして治療後の継続的なメインテナンスが組み合わさることで、27年という長期経過につながりました。

本症例の治療を行ったのは、上川歯科医院を開業して5年目のことでした。それから27年にわたり当院へ通い続け、定期的なメインテナンスを継続してくださった患者様に、改めて心より感謝申し上げます。

長期経過は、治療する側の努力だけで得られるものではありません。患者様と歯科医院が同じ目標を共有し、長い時間をかけて口腔内の健康に向き合ってきた結果でもあります。

27年を経ても変わらない外科の原則

GBRに使用する材料や術式は、この27年間で大きく進歩しました。一方で、長期安定のために守るべき基本的な外科原則は変わりません。

代表的な考え方が「PASSの原則」です。

  • Primary wound closure:創部を緊張なく確実に閉鎖すること
  • Angiogenesis:骨再生に必要な血液供給を確保すること
  • Space maintenance:骨が形成されるためのスペースを維持すること
  • Stability of the wound:治癒期間中、創部と移植材を安定させること

新しい材料や術式を選択することは重要です。しかし、それらの性能を十分に発揮させるためには、基本原則を一つずつ確実に守る必要があります。

今回の講演では、27年前の症例と現在の治療を対比しながら、時代とともに変化したものと、長期安定のために変えてはいけないものについてお話ししました。

インプラント治療は、治療後からが本当のスタート

インプラント治療は、インプラントを埋入して被せ物を装着すれば終わりではありません。

天然歯と同じように、インプラントにも炎症や噛み合わせの変化、上部構造の摩耗・破損などが生じる可能性があります。長く安定して使用するためには、患者さんご自身による日々のセルフケアと、歯科医院での定期的なメインテナンスが欠かせません。

27年という経過は、外科手術の結果だけではなく、治療後も継続して口腔内を管理してきた結果でもあります。

長期経過から得られた知見を、これからの臨床へ

過去の長期経過症例を振り返ることは、昔の治療を紹介するだけではありません。

現在の材料や術式をどのように生かすべきかを考え、これから治療を受ける患者さんに、より予知性の高い治療を提供するための大切な手がかりになります。

上川歯科医院では、今後も新しい知識と技術を取り入れながら、長年の臨床経験から得られた基本原則を大切にし、治療後の長期安定を見据えたインプラント治療に取り組んでまいります。


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